移民国籍法(INA)の差別禁止規定に基づき、雇用主は、市民権や国籍に基づく雇用、解雇、人材紹介、有料職業紹介における差別や、雇用資格確認プロセスにおける不当な文書作成行為を行わないように従業員を雇用、監督することが義務付けられています。また、報復や脅迫に関与することも禁じられています。
雇用適格性を文書化するため、連邦法は雇用主に対し、1986年11月6日以降に米国で雇用された人物についてフォームI-9を使用し、これを保管することを義務付けています。一部の雇用主は現在もフォームI-9を紙で記入していますが、他の雇用主はE-Verifyに参加しています。E-Verifyとは、フォームI-9の情報を政府の記録と照合し、従業員の米国での就労許可を電子的に確認する、ウェブベースの任意システムです。フォームI-9とE-Verifyの両プロセスは連邦法で保護されており、雇用主がこれらのプロセスにおいて差別に関与することを禁止しています。
フォームI-9とE-Verifyの記入管理を支援するために、多くの雇用主は民間企業のシステムを活用しています。このようなオンラインプログラムやツールを使用する場合でも、雇用主はINAの差別禁止規定を遵守する責任を負っています。最近の取締りの強化に伴い、雇用主がこれまで以上にコンプライアンスに集中し続けることが重要になっています。
米国司法省公民権課(DOJ)は最近、雇用主がフォームI-9を電子的に記入したり、E-Verifyに参加したりするために商業的なまたは独自のプログラムを使用する際に、不法な差別やその他のフォームI-9違反を回避する方法を示したファクトシートを発表しました。
DOJによると、雇用主がフォームI-9を電子的に記入・保管する、あるいはE-Verifyに参加するためにフォーム I-9ソフトウェアプログラムを使用する場合、当該プログラムが以下を遵守しているかどうか確認する必要があります。
- 米国移民税関捜査局および国土安全保障省捜査局 (HSI)が執行するI-9フォームの法的要件
- 米国市民権移民局が管理するE-Verify要件
- 司法省公民権局移民・従業員権利課(IER)が執行する不当な雇用慣行の禁止事項
さらに、雇用主は第三者による民間企業のフォームI-9ソフトウェアプログラムを使用する際、以下の10個の落とし穴に注意する必要があります。
雇用主が外部からアクセスした従業員情報(例えば、従業員の求職申込書から情報を持ち込むなど)をフォームI-9に事前に入力すること。
- 雇用主が従業員のセクション1の記入を準備または翻訳者として手伝う場合を除き、当該従業員に代わってフォームI-9を記入すること。
- フォームI-9の一部を削除したり、フォームI-9が要求する以上の情報や異なる情報を要求すること。
- 雇用主がE-Verifyを使用している場合、E-Verifyプロセスのステップを追加または削除すること。
- セクション1の記入を準備者や翻訳者が従業員に手伝わせないようにすること。
- フォームI-9の自動修正、予測文字の使用、または日付の後付け。
- フォームI-9に加えられた変更を監査証跡に記録しないこと。
- 従業員のセクション1の市民権または移民ステータスの証明書を変更または更新すること。
- 不必要な書類を要求すること(従業員の身元を再確認したり、従業員の米国での就労許可を不当に再確認するなど)。
- 従業員がすでに「雇用許可」の結果を得ている場合、フォームI-9の修正により新たなE-Verifyケースを作成すること。
最後になりますが、雇用主は、政府の承認、証明、認可を主張するフォーム I-9オンラインプログラムや、ソーシャルセキュリティーナンバーを要求したり、フォームI-9に記入が完了し、ソーシャルセキュリティーナンバーを待っている従業員に給与を支払わなかったりするプログラムなど、従業員の就労や給与の支払いを困難にするプログラムには注意すべきといえます。技術支援やサポートを提供しないオンラインツールも懸念の対象となります。
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