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Signature - Often overlooked, the use clause of an NDA can have the same effect as a standstill provision or non-circumvent clause if it is not carefully drafted.

速報

守秘義務契約(NDA)における注意点:意図しない制限を避けるために

守秘義務契約(NDA)の締結に際しては、スタンドスティル条項(一定期間、情報開示者の同意のない特定委の行為を禁止する条項)や不可避(non-circumvention)条項に関する交渉に多くの時間が費やされ、秘密情報を受ける側は過度な制限を課せられないよう注意を払います。

一方で、NDAに普遍的な条項である秘密情報の使用に関する条項(use clause、以下“Use条項”)が、草稿次第では、スタンドスティル条項や不可避条項のような制限を課してしまうことは見落とされがちです。

NDAにおいて、特定の目的にのみ秘密情報の使用が許可されているということは、他の目的では秘密情報を使用できないということです。例えば、「交渉中のX社とのエクイティ・ファイナンス取引を検討する目的でのみ」秘密情報の使用を許可するという内容の条項は、X社が関与するそれ以外の取引に対しては情報の使用を事実上禁止していることになります。

つまり、NDA締結の1ヶ月後に第三者からX社の債権の購入を持ち掛けられた場合、購入できない可能性があります。債権購入の決定に関して使用した情報は、第三者である債権の売主から得た情報だけであると主張することはできますが、もしX社が債券購入を阻止したければ、X社は、「X社から開示された秘密情報も必然的に使用したはずなので、X社と締結したNDAUse条項に違反した」と主張することができます。その場合、開示された秘密情報が債券購入の意思決定プロセスにおいて何の役割も果たしていないことを証明するのは難しいかもしれません。

しかし、Use条項が、「X社に関連するあらゆる取引」のために秘密情報を使用することを許可していたとしたらどうなるでしょう。この場合、第三者からX社の債権を購入することはNDAで特定した取引ではないものの、X社に「関連する」取引ではあるため、債券購入の判断についてX社の秘密情報を使用すること(NDAの他の制限、例えばX社が関与する他の取引を禁止するnon-circumvent条項などの制限の下で)ができることになります。

文言の重要性

このように、Use条項の文言を少し変えるだけで、守秘義務契約を締結する相手方とのビジネス機会が可能になったり、逆にロックアウトされたりすることがあります。もしNDAで秘密情報の使用がX社との取引にのみ許可されているのであれば、X社と一緒に契約をする必要があります。デラウェア州裁判所は、Martin Marietta Materials, Inc.Vulcan Materials Co.事件において、「当事者間のビジネス取引の可能性を評価する目的でのみ秘密情報の使用を許可する、という内容のNDAの条項は、両社の取締役会によって契約上合意または同意された取引に関してのみ秘密情報を使用できることを意味している」と判示しています。

X社が関与する(“involving Company X)」取引を想定したUse条項についてはどうでしょうか。それは取引の対象がX社でなければならないということなのでしょうか、それともX社が交渉に関与しなければならないということなのでしょうか。

また、「取引(transaction)」という用語の前に置かれる冠詞も非常に重要です。ブローカーがX社に関する秘密のビジネス機会を持ってきた際、NDAで特定した「その」取引(“the transaction)を評価するために秘密情報の使用が許可されている場合、ブローカーが持ち掛けた該当取引にのみ秘密情報の使用が認められることを意味するでしょう。他方で、NDAX社に関する「ある」取引(“a transaction)に関連して情報を使用することを許可している場合は、より柔軟性があることになります。

大文字・小文字のような単純な表記の違いでも、大きな違いを生むことがあります。秘密情報の使用が認められているのはX社に関する“transaction”なのか、それとも Transaction”なのか。単語が大文字で表記されている場合、その単語は契約書の中で定義されている可能性が高いです。例えば、契約書に「本契約の目的上、『取引(Transaction)』とは、当社の特定の資産の交渉に基づく売却を意味する」というような文言が含まれているかもしれません。逆に、小文字の“t”を使った“transaction”の場合、X社に関連したあらゆる種類のビジネス上の取り決めを意味する可能性があります。

他の条項との関係

「取引(Transaction)」の定義は、Use条項や他の条項と合わせて注意深く読まなければなりません。「Transaction」の定義を拡大すると様々な状況で秘密情報を使用できるようになるかもしれませんが、その前に、その用語が契約書の他の場面でどのように使用されているかを確認する必要があります。「Transaction」と競合するような行為、または「Transaction」に代替するような行為を禁止する不可避条項がある場合、過度に広範な定義は逆に機会を逸することになりかねません。

秘密情報を開示される側からすれば、理想的な守秘義務契約とは、「取引(Transaction)」をかなり具体的に定義しており、他方で、「Transaction」に言及しないか「TransactionまたはX社に関するその他の取引に関連して」秘密情報を使用することを認めている非常に広範なUse条項を設けた守秘義務契約といえるかもしれません。

交渉の末に広範なUse条項を規定できたとしても、利益の回収を意図するような文言にも注意する必要があります。NDAには、秘密情報の開示当事者にとって「不利益」となるような使用を禁止する条項(Use条項の一部として、または契約書の他の場所で)を含んでいるものがあります。開示した秘密情報を使用されることは、何らかの形で開示当事者に不利益をもたらすものと考えられるため、開示当事者が特定の取引への参加を望まない場合、不利益となる使用としてNDA違反を主張する可能性があります。

開示当事者が制限的なUse条項を主張していても、その影響を緩和できる場合があります。制限を受けないようにしておきたい取引や取引分野がある場合には、そのような取引や分野を禁止する意図がない旨の文言を挿入することが効果的です。

例えば、NDAの相手方がウィジェットの製造事業の資金調達先を探しており、自社がウィジェットローン市場に積極的に関与している場合、NDAは自社による競合他社への融資を妨げるものではない、ということを開示当事者が認める文言を挿入するとよいでしょう。開示当事者は、そのような融資に関連して秘密情報を開示しないことの確認を求めるでしょうが、これは合理的です。

「Greater Overall Knowledge」条項と「Residual Knowledge」条項

制限的Use条項の影響を抑えるもう一つの方法は、開示当事者のa) 会社や取引に関する特定の事実と、b) 秘密情報のレビューの結果によって必然的に生じる、事業や業界に関する一般的な理解の拡大とを区別する、「より大きい全体的知識の拡大(Greater Overall Knowledge)」条項を挿入することです。開示当事者は、前者がUse条項の対象となることを期待しますが、後者を対象外とすることを認めてくれる場合があります。

実務的には、当該情報が秘密開示側の会社特有のものなのか、それとも単に業界の全体的な知識を高めるためのものなのかを判断するのは難しいかもしれません。しかし、紛争になった場合に、NDAにこの種の条項があることは、少なくとも、Use条項が完全に制限的なものと解釈されることを意図していないと証明するのに役立つはずです。

関連する概念として、「残留知識(Residual Knowledge)」条項があり、これは一般的に、記憶に残っている秘密情報の「残留」を、記憶した本人のために使用することを許可するものです。条項の文言次第では、提示されている取引とは関係のない目的のために秘密情報を使用できる広範な自由度を得られる場合があります。

非開示と使用制限

技術的なポイントとして、NDAの非開示条項とUse条項との区別に留意することが重要です。「秘密情報」の定義の標準的な例外が、契約の秘密保持条項の例外として定められることがあります。例えば、「本契約に基づく秘密保持義務は、公開されている、または公開される情報、第三者から受け取る情報などには適用されないものとする」といったものです。契約当事者は「秘密保持義務」を非開示条項と非使用条項の両方をカバーするものと考えているかもしれませんが、厳密に言えば、秘密保持と使用は別個の概念です。上記の例では、契約後に一般に公開された情報であっても、それをNDAで許可された目的以外の目的で使用することは、契約上認められない可能性があります。その場合、秘密保持義務の例外のみを扱う段落を設けるのではなく、「秘密情報」の定義の中に標準的な例外を組み込むことが効果的です。

また、非開示と非使用の区別は、契約期間に関する条項を検討する際にも留意すべきです。開示当事者が、ビジネス資産が一般に公開されるのを防ぐために、非常に長いNDAの契約期間を主張することがあります。他方で、開示当事者は、予定されていた取引が完了または中止となった後は、被開示側がその秘密情報を自分のために使用することにはそれほど関心がない場合があります。その場合、開示当事者は非使用義務の期間を非開示義務の期間よりも短くすることに承諾する可能性があります。

以上のとおり、Use条項そのものや、Use条項と守秘義務契約の他の条項との相互作用は、慎重に考慮しなければなりません。文言の小さな修正によって、新たなビジネスチャンスが開かれることもあれば、事実上の足止めを受けてしまうこともあります。Use条項についての注意を怠ると、過剰に開示された情報がかえって危険なものとなるかもしれません。

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