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コロナウィルス

速報

雇用主のためのワクチン接種の義務化に関するガイダンス

2021年8月30日  

ハイライト

ワクチン接種を義務化している、または義務化を望む雇用主の増加

障害を持つ従業員、および誠実な宗教的信念からワクチン接種が制限される従業員に対する合理的配慮の提供

ワクチンに関するポリシー実施の際は州法、州知事令にも要注意

2021年8月23日、米国食品医薬品局(FDA)は、現在コミナティ(Comirnaty)という名称のファイザー社のCOVID-19ワクチンを正式承認しました。また、モデルナ社およびジョンソン・エンド・ジョンソン社のワクチンも正式承認されることが見込まれています。このFDAによる承認は、雇用主にとって、ワクチン接種の義務化に反対する従業員の対応に効果をもたらすと考えられます。

バイデン大統領はFDAの発表に続く形で、従業員のCOVID-19ワクチン接種の義務化を開始するよう雇用主に求めました。

その他の連邦機関も、ワクチン接種の義務化に関して検討しています。8月13日にOSHAは、雇用主にCOVID-19ワクチン接種の義務化を推奨する、拘束力のないガイダンスを公表しました。拘束力はありませんが、その文言には、OSHAが現在のパンデミック状況下で適切に作成されたワクチン接種の義務化を支持していることが示されています。

FDAからの公表以前にも、ウォルト・ディズニー社やフェイスブック社を含む多くの大企業が、ワクチン接種義務のポリシー、または職場復帰に際して従業員にワクチン接種を義務付けていることを表明しています。

本ガイダンスは、一部の州および地方自治体がワクチン接種を義務付けている医療従事者以外の一般の職種に焦点を当て、雇用主によるワクチン接種の義務化に関して、労働雇用法の観点から注意すべき点について解説します。バイデン大統領は、さらに、介護施設スタッフにワクチン接種を義務付けない場合、近い将来、メディケイドとメディケアの資金を失うリスクがあると発表しています。

法的な注意点

現在、民間または公共セクターの雇用主が従業員に対してCOVID-19ワクチン接種を義務付けることを禁じる連邦雇用法はありません。

公民権法第7編(Title VII

公民権法第7編は、宗教に基づく差別を禁じているため、雇用主は、誠実な宗教的信念のためにワクチン接種(COVID-19ワクチン接種に限らない)を拒否する従業員に合理的に対応しなければなりません。一方、裁判所では、雇用主が従業員の個人的なライフスタイルの選択や好みに対応する必要はないという判断が下されています。COVID-19ワクチンの否定が誠実な宗教的信念に基づいているかどうかを判断するには、注意と心配りが必要となります。一般的に雇用主には、従業員が合理的配慮を必要とする誠実な宗教的信念を持っているか、およびどのような配慮が必要かを評価することが認められていますが、雇用機会均等委員会(EEOC)は、COVID-19のパンデミック以前に、従業員から宗教的な合理的配慮の要求があった場合、その要求は正当なものととらえることを雇用主に推奨しています。

パンデミック下において、これらの解釈が変わるかどうかはまだわかりません。さらに、公民権法第7編に基づく従業員への合理的配慮の基準は、障害を持つアメリカ人法(ADA)に基づく、障害のある従業員に対する合理的配慮の基準とは異なることにも注意が必要です。公民権法第7編では、雇用主は、ビジネスに「最小限の」コストまたは負担以上のものを課す場合、従業員の誠実な宗教的信念に合理的配慮を提供する必要はありません。

障害を持つアメリカ人法(ADA

EEOCのガイダンスによれば、従業員にワクチン接種を受けたかどうかを尋ねること、またはワクチン接種の証明を求めることは、ADAにおける健康診断(medical examination)ではありません(ただし、ワクチン接種のステータスは機密の医療情報と見なされます)。この他、ADAは、雇用主が従業員に対してワクチン接種を義務化するポリシーの実施を禁止していません。ただし、ADAは、障害のある従業員がワクチン接種をすべきでない場合、雇用主に合理的な配慮を提供することを義務付けています。その場合、雇用主は従業員と協力して適切な合理的配慮の内容を決定しなければなりません。

州法

いくつかの州では、ワクチン接種を義務化するポリシーを制限し得る措置が取られています。モンタナ州は、民間雇用主が従業員のワクチン接種状況に基いて差別することを最初に禁止した州となりました。他にも、州および地方自治体政府に職員のワクチン接種の義務化を禁止している州があります。さらに、いくつかの州では、法律または州知事令のいずれかによって、ワクチン接種状況を証明する、いわゆる「ワクチンパスポート」の使用を禁止、または制限しようとしています。これらの制限の多くは、民間組織の雇用主には適用されません。こうした制限や禁止は、フロリダ州がノルウェージャンクルーズ社(Norwegian Cruise Lines)に対して「ワクチンパスポート」を禁止したことが、地方裁判所によって差し止められたように、民間組織では法的な効力を持たないと予想されます。したがって、雇用主は、ワクチン接種を義務化しようとする際には、州および地方自治体による制限に照らし合わせ、弁護士に相談することが重要となります。

宗教的信念に基づいた、および障害者に対する差別を禁ずる州法は、ほとんどの場合、公民権法第7編およびADAと同様に解釈されています。ただし、これらの州の差別禁止法に基づく裁判所または州政府機関の判断も検討する必要があります。

NLRAと団体交渉

COVID-19パンデミックに関連する緊急事態において、雇用主は一方的に雇用条件を変更し得るとする、拘束力のないガイダンスを前全国労働関係委員会(NLRB)法律顧問が公表したことから、全国労働関係法(NLRA)に基づく影響は明らかではありません。NLRBは以前、従業員の雇用条件に変更をもたらすようなワクチン接種の義務化、または感染管理に関するポリシーは、団体交渉の対象となる議題であると決定しました。したがって、団体交渉協定特定の権限の付与または労働組合による交渉権の放棄がない場合、労働組合がある雇用主は、組合に通知し、ワクチン接種義務化プログラムについて交渉する機会を与えることが必要となります。団体交渉が必要な場合、合意または行き詰まりに達するまで決定を実行することはできません。

さらに、雇用主に契約上ワクチン接種を義務化する権利があったとしても(または組合がその決定について交渉する権利を放棄したとしても)、従業員のワクチン接種の期限や拒否した従業員に対する懲罰など、その影響については交渉が必要になる場合があります。

実際問題として、すべてではありませんが、いくつかの組合がワクチン接種の義務に賛成していることを考えると、ワクチン接種の義務化に関して従業員の交渉代表と協力することは、こうしたポリシーを従業員に「売る」ために必要といえるかもしれません。労働組合がある雇用主は、団体交渉協定を見直し、ワクチン接種義務化を一方的に実施し得ることを確認すること、または従業員の団体交渉代表者との話し合いを検討する必要があります。

労働組合がない雇用主は、組合の有無によらず、保護された言動(Protected Concerted Activity)を行う従業員の権利をNLRAが保護していることも考慮する必要があります。ワクチン接種に関しては、ワクチン接種の義務化に対する集団での抗議またはストライキが保護された言動に該当する場合があります。一般に、NLRAの下では、保護された言動を行う従業員に対する懲罰または解雇は違法です。したがって、雇用主は、ワクチン接種の義務化に対して従業員が集団的な抗議を行っている場合には、労働法弁護士に相談することを検討すべきです。

賃金と就労時間

COVID-19ワクチンは現在無料で一般に提供されています。ただし、医療業界に対して施行される新たなOSHA COVID-19緊急臨時基準(OSHA COVID-19 Emergency Temporary Standard)の対象となる雇用主等は、ワクチン接種に費やした従業員の時間を雇用主が補償しなければならない場合があります。ワクチン接種に費やされた時間が補償可能かどうかについては、連邦法に加えて、州の賃金就労時間法の分析も必要とする場合があり、事実に基づいた精査が必要となります。

その他の注意点

多くの雇用主は、ワクチン接種の義務化には消極的で、むしろ、ワクチンの安全性と有効性を裏付ける確立されたデータについて従業員を教育し、ワクチン接種を勧めたり、ワクチン接種者にインセンティブを提供したりする傾向にあります。ワクチンに関する高レベルの誤った情報、ならびにワクチン接種に対する躊躇、あるいはCOVID-19ワクチンに対する積極的な拒否等を考えると、特に、適切な人員の確保に苦慮しがちな現状等からも、雇用主はワクチン接種の義務化による影響を慎重に検討する必要があります。一例としてヒューストン・メソディスト病院が医療従事者にワクチン接種義務化プログラム(連邦地方裁判所によって支持されたプログラム)を実施した際、150人以上の従業員が辞職、または解雇されたことが報告されています。さまざまな利害関係者、すなわち従業員、ベンダー、顧客、そしてもちろん雇用主の業務にも配慮して検討する必要があります。

ワクチン接種義務化ポリシーを作成するためのチェックリスト

ワクチン接種を義務化するかどうかを決定する際、弁護士への相談に加えて、雇用主は以下の点について検討することをお勧めします。

  • ポリシーを実施するのはなぜですか。業務に良い影響又は悪い影響をもたらしますか?より安全な職場を提供することになりますか?全社的な実施が必要ですか、それとも特定の職場、または特定の職種の従業員にのみ実施すべきでしょうか?後者である場合、対象となる職場や職種を特定して区別する理由は何ですか?
  • 従業員の現在のワクチン接種状況はどうなっていますか?自主的なプログラムは効果的でしたか?また、ワクチン接種に関する教育、奨励に対して、従業員はどのように反応しましたか?ワクチン接種を義務化する前に、従業員のワクチン接種に対してインセンティブの提供を試みましたか?
  • 従業員、顧客、訪問者、ベンダー、および一般の人々はどのように受けとめる可能性がありますか?これらの利害関係者からポリシーに反対意見があった場合、どのように対処しますか?
  • ワクチン接種義務化ポリシーの実施に影響を与える連邦、州、および地方自治体の法的規制(または要件)についてどのように理解していますか?特に州および地方自治体政府の政策および対策は急速に進化しますが、COVID-19の変異株の広がり、また、ワクチンやワクチン接種の義務に関する政治色のからみが継続するかぎり変化は続くため、雇用主は最新の情報に沿って常にアップデートすることが重要です。
  • 書面によるポリシーの作成。これには、社内または社外の弁護士、ならびに人事、コミュニケーションの専門家のレビューが必要となります。ポリシーは、すべての従業員が理解できるように明確なものとし、ポリシーの要件や準拠しなかった場合どうなるのか、また合理的配慮や例外的な措置を要求する際のプロセスを詳しく説明する必要があります。実施に先立って、雇用主は要求された合理的配慮を評価するため、明確に定義された決定木を持つ必要があります。

©2021 Barnes & Thornburg LLP. All Rights Reserved. 書面による許可なく複製することを禁止します。

本ニュースレターは、法律の最新情報、動向をご案内するものであり、いかなる場合も法務サービス、法務アドバイスの意味を持つものではありません。本ニュースレターは、一般的な案内目的でのみ配布されるものですので、個々の問題については弁護士までご相談下さい。

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