速報6.16.25

新たなFCPAガイドライン:コンプライアンスプログラムを見直すべきか?

米国司法省(DOJ)は、202569日に新たなガイドラインを発行し、海外腐敗行為防止法(FCPA)違反の調査と起訴の対象を、米国の経済的または安全保障上の利益が脅かされる場合に限定しました。企業が注目すべき点は以下のとおりです。

  1. コンプライアンス部門は引き続き注意を怠らない。
  2. 必要に応じたFCPAコンプライアンスプログラムの変更、トレーニングの実施。
  3. DOJの新たな優先事項にしたがって、リスクを再考し、プログラムを再編する。

数年後に政権が変わる場合は優先事項が再度変更されることが考えられるため、特に現行で優先事項に含まれない領域の不正行為については、企業はDOJへの自主的な開示を検討すべきです。

今回の新たなガイドラインは、これまでFCPA執行が米国企業に「不当な負担」を課してきたという現行政権の指摘を踏まえています。「アメリカ第一」政策にしたがって、新ガイドラインは以下の内容で直ちに実施されました。

  • FCPAの調査および起訴は、「米国の国家的利益を直接損なう行為」に限定され、特に企業による「特定されない不正行為」ではなく、個人の刑事不正行為に焦点を当てる。
  • 「重大な不正行為」のみが優先される。
  • FCPAの調査、起訴は国家安全保障上の懸念からなり、現政権が掲げる「麻薬密売カルテルと国際犯罪組織の根絶」という目標達成に活用されるべき。

これらの新たなガイドラインを踏まえ、海外で事業を展開する企業はどのように対応すべきでしょうか?

コンプライアンス部門は引き続き要注意

新たなガイドラインは、FCPAの調査と起訴の継続を明確にしており、本年1月以降のDOJの措置もこれを裏付けています。FCPA執行の「一時停止」期間中も、DOJは少なくとも7件のFCPA案件または調査を継続させました。ただし、同時に、DOJは少なくとも5件の調査を終了し、1件の訴訟を却下し、少なくとも2社に対してモニタリングと報告義務を早期に解除しました。DOJの調査件数は減少していますが、企業のコンプライアンス部門にとって、FCPA執行のリスクがなくなったわけではありません。

FCPAコンプライアンスプログラムの見直し

FCPAが今後どのように適用されるかは不確かで、DOJの最近の却下事例には明確なパターンは認められません。米国企業の利益や国際犯罪組織に関与しないと思われる案件も継続されています。

また、DOJのガイドラインでは、米国証券取引委員会(SEC)によるFCPAの贈賄禁止規定と「帳簿記録」会計規定の継続については言及していません。

企業は、DOJの指針で挙げられた具体的な事項に沿ってコンプライアンスプログラムを見直し、今後数ヶ月から数年をかけて、法規制の優先順位や適用の変化に対応できるよう、柔軟性を持つことが望まれます。例えば、考えられる変更には、第三者に対するカルテル関連性のスクリーニング強化や、個人責任の重視などがあげられています。

コンプライアンスの全体的な転換

FCPA調査の権限を独占的に有していた司法省刑事局詐欺部門は、1月時点で32名だった検察官を6月には約15名に減少したと報じられています。一方、同省は、汚職捜査において、マネーロンダリング資産回収部門(MLARS)の役割を強化しているようです。

新たなFCPA調査は司法省刑事局の上級職員による承認が必要ですが、今年初め、パム・ボンディ司法長官は、「カルテルおよび国際犯罪組織(TCO)に関連する外国の贈収賄」に関するFCPA案件の捜査権限を各連邦検事へ委譲しました。司法省は、関税回避や政府調達詐欺など、その他の優先事項もさらに重視すると強調しています。

企業に重大な影響を及ぼすため、腐敗防止は、長年にわたりコンプライアンスプログラムの基本的な重点項目とされてきました。司法省は現在、個人の責任に重点を置き、また、他の法執行にリソースを割り当てていることから、企業のコンプライアンスプログラムは、重点項目の見直しが必要となることが考えられます。

自主的な開示の検討

FCPAの時効は5年(会計記録に関する違反の場合は6年)です。したがって、現在の行為が起訴対象となるのは次期政権下かも知れません。現政権は先ごろ、企業による(不正行為の)開示を奨励し、悪質でない限り、企業訴追を見送るという方針を発表しました。企業は、新たなガイドライン下での起訴の可能性が低い場合であっても、FCPA違反に対する自主的な開示を検討すべきでしょう。

 

詳しくは英語版をご覧ください。

 

本ニュースレターは、法律の最新情報、動向をご案内するものであり、いかなる場合も法務サービス、法務アドバイスの意味を持つものではありません。本ニュースレターは、一般的な案内目的でのみ配布されるものですので、個々の問題については弁護士までご相談下さい。

 

©2025 Barnes & Thornburg LLP. All Rights Reserved. 書面による許可なく複製することを禁止します。