コンプライアンス義務は、従業員の初出勤前から退職後まで、雇用サイクルのすべての段階に適用されます。連邦政府の交代を踏まえ、雇用主は、雇用主がスポンサーとなる非移民および移民手続きに関するコンプライアンス・プログラムの見直しを検討すべきです。
I-9監査
I-9(Form I-9雇用資格証明書)は、米国企業が雇用する個人の身元および就労資格を証明するために使用されます。雇用主は、他の要件に加えて、すべての現従業員について、I-9を検査用に保管しなければなりません。I-9の保管義務は、雇用関係が終了した時点で終了するわけではありません。雇用主は、元従業員について、雇用日から少なくとも3年間、または従業員との雇用解消日から1年間、I-9を保管することが義務付けられています。
退職した従業員については、雇用日から少なくとも3年間、または従業員が退職してから1年間、I-9の保管が義務付けられています。これらの書類は、国土安全保障省の検査通知を受け取ってから3日以内に提出しなければなりません。違反があった場合は、雇用主は初犯の場合、1日あたり1件につき最高5,579ドルの罰金が科せられる可能性があります。
国土安全保障省の検査通知があった場合に備え、現在のI-9保管方法について社内監査の実施をおすすめします。
H-1B:一般公開ファイルの保管
H-1Bビザの従業員を雇用するすべての雇用主は、一般公開ファイル(PAF,Public Access File)をH-1B従業員ごとに作成し、保管しなければなりません。この書類は、閲覧希望者にいつでも提示しなければならないという要件に加え、雇用主は、労働条件申請書(LCA, Labor Condition Application)を米国労働省(DOL)に提出した日付までにファイルの公開を確立しなければなりません。期限内に公開できない場合、コンプライアンス上の問題や罰則につながる可能性があります。
さらに雇用主は、H-1B就労者が労働条件申請書に基づいて雇用されていた最終日から1年間、または有効期限日、または取消し日から1年間、一般公開ファイルを保管しなければなりません。
米国労働省は、この一般公開ファイルを任意に監査する裁量権を有しています。公開ファイルとして、正しい書類を正しい期間保管していることの確認が必要となります。
永住権(グリーンカード)プロセスと労働省監査
米国労働省は、雇用主が永住権のスポンサーとなる従業員のために提出するETA 9089またはPERM申請を任意に監査する裁量権を有しています。さらに、雇用主は、ETA 9089を労働省に提出した日から5年間、PERM監査ファイルを保管しなければなりません。
雇用主が無作為に監査対象として選ばれた場合、通常、適切に完了した労働市場テストの証拠を提出することが求められます。雇用主が規定の期間、適切な監査ファイルを保管しなかった場合、コンプライアンス上の問題が生じる可能性があります。
職場の立入調査
USCISは、ビザ請願書に記載された情報の確認手段として、2009年7月、立入調査プログラムを施行しました。このプログラムでは、コンプライアンス審査の一環として、Fraud Detection and National Security Directorate (FDNS 不正検出・国家安全保障局)の移民担当官が、事前通知なしに、企業を訪問して情報を収集します。
H-1BやL-1A、L-1Bなどの非移民ビザ請願書に使用されるUSCISのフォームI-129に署名する雇用主はすべて、「提出された書類は、USCISが適切と判断するあらゆる手段(立入調査を含むが、これに限定されない)により、USCISが確認できる」ことに同意するものとします。
FDNSの立入調査は任意ではあるものの、政府職員が調査のために職場への訪問を求めてきた場合には、雇用主はこれに協力することが望ましいといえます。また、FDNSによる調査が行われた場合には、雇用主は直ちに移民弁護士に連絡を取ることをおすすめします。通常、立入調査の多くは事前通知なしに行われ、FDNSは弁護士の都合に合わせて調査を再設定することはありませんが、物理的に可能であれば弁護士の立会いが許可されたり、電話での参加が認められる場合もあります。
2019会計年度現在、FDNSは以下の請願に対するコンプライアンス審査のために、職場を訪問する権限を有しています。
- 特別移民宗教活動家請願(審査前および審査後)
- H-1B非移民一時ビザ(審査後)
- L-1非移民企業内転勤エグゼクティブまたはマネージャービザ(審査後)
- EB-5移民投資家プログラムビザ(審査前)
変更に備える
新政権は、移民法の施行を最優先事項とすることを明確にしています。多くのニュース報道が国境警備に焦点を当てている一方で、雇用主の移民法コンプライアンスも焦点となる可能性が高まると考えられます。今年も年末に近づきましたが、新政権が政策を決定する前に、現在のコンプライアンス慣行を見直すことをおすすめします。
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